お取引のルール BEGINNERS

Ⅰ.商品デリバティブ取引とは

商品デリバティブ取引とは?先物取引とは?

デリバティブ(金融派生商品)取引の分類として「先物取引」・「オプション取引」・「スワップ取引」などがあります。
国内の取引所に上場されている商品デリバティブ取引は主に「先物取引」にあたります。(一部の銘柄ではオプション取引もあり)
そこでここでは「先物取引」と「商品」について説明していきます。

先物取引とは・・・

先物取引とは、売り手と買い手が、取引の対象となるモノ(原資産)を、現時点で取り決めた価格(約定価格)で、将来の一定の時期(決済期日)に受け渡しすることを約束する取引(契約)です。

そして、当初の契約どおり決済期日におカネとモノを受け払いして取引を終えることもできますが、先物取引では、決済期日前に買い手は別の買い手と売り契約を結び(転売)、売り手は別の売り手と買い契約を結ぶ(買戻し)ことによって、当初の契約と新たに結んだ契約を相殺し、当初の契約と新たな契約との差額を清算(差金決済)することで取引を終了させることができるのが特徴です。このため、あらかじめモノを持っていなくても売り手になることができるのです。

契約の履行の仕方(決済方法)・・・

契約の履行の仕方(決済方法)には大きく分けて以下の2つの方法があります。

先物取引の対象となるモノとは・・・

1970年代までは、先物取引の対象となる「モノ」は農産物や工業原材料などの伝統的な有形商品に限られていましたが、石油ショックや為替の変動相場制への移行などを契機に価格変動リスクを回避したいというニーズが高まり、外国通貨・債券などの金融商品や、株価指数・物価指数といった情報の一種まで幅広く取引対象とされるようになりました。

このうち農産物・工業原材料などの伝統的な有形商品を「商品」とか「コモディティ」といい、商品を原資産にした先物取引を「商品先物取引(商品デリバティブ取引)」といいます。「商品」の概念は時代の経過とともに拡張して、最近では形のない「電力」も商品先物取引の対象となっています。

Ⅱ.先物市場の参加者

先物市場の参加者

先物市場の参加者はヘッジャー、スペキュレーター、そしてアービトラージャーに大別できます。

ヘッジャー、スペキュレーター、アービトラージャー

ヘッジャーとは手許にモノ(=現物)を在庫として有していて(又は将来保有する予定で)、その現物商品の価格変動リスクを回避するために先物市場に参加する人たちです。先物取引を利用してリスクヘッジ(将来の価格を確定)することで、製造・加工等の本業に専念できるようになります。「ヘッジ」には掛けつなぎ、つなぎ売買、保険つなぎなどの意味があります。

スペキュレーターとは先物価格の変動を利用して資産運用する目的で取引に参加する人たちです。商品先物取引は、①売りからでも買いからでも取引を始められること、②株式や債券等との価格変動の相関性が低く分散投資に有効であること、③総取引代金の5~10%程度の少額の資金で取引できるなどの魅力があるため、資産運用目的で取引をするのです。

アービトラージャーとは同一商品について取引される市場や取引期限が異なるものの間の価格差、または異なる商品間の価格差など様々な価格差の変動から利益を上げようとする人たちです。このような人たちの関心は価格の変動ではなく価格差の変動(例:原油とガソリンなど)であり、そこに注目して利益を狙います。

Ⅲ.商品先物取引の特徴

証拠金取引・レバレッジ取引であること

商品デリバティブ取引に限らず、有価証券や通貨などの全てのデリバティブ取引に共通する特徴は「証拠金取引であること」です。 証拠金とは、未決済契約(建玉(タテギョク)といいます。)を保有している者が取引履行の担保として清算機関に差し入れなければならない金銭又は有価証券をいいます。清算機関とは、取引所の指定を受けて取引所取引に関する資金決済に関する業務を主に行っている組織です。一般投資家の取引証拠金も、金融商品取引取引業者を通じて清算機関に預託されます。

レバレッジ取引とは・・・

証拠金は取引履行の担保金であり、値洗損金の清算原資であるという性質があるため、その額は、過去の一定期間の価格変動を基に次の1日分の価格変動をカバーできるよう清算機関が統計的に推定して定めており、それを下回らない範囲で各金融商品取引業者が定めています。

その結果、少額の投資元本で大きな金額の取引を行うことが可能になっています。取引金額に対してわずか数パーセントの証拠金を預けるだけで行えるこのような取引はテコ(レバレッジ)の原理に似ていることから「レバレッジ取引」と呼ばれていて、資金効率がよいことがその魅力といえます。
しかしその反面、価格が見込み通りに変動しなかった場合、元本に与えるダメージも大きなものになるハイリスク・ハイリターンの取引であるともいえますから、「取引規模を小さめにする」「証拠金を多めに預託する」「見込みと違う場合早めに決済する」などのリスク管理が必要になってきます。

元本保証のない取引であること

  • 商品デリバティブ取引は元本保証のない取引です。
  • 価格変動の状況次第では、預託した証拠金額を超える損失が発生する場合があります。

商品デリバティブ取引は、株取引と同様に投資資金に関する元本保証はありません。
また、損失額が当初預託した証拠金を超過する場合もあります。その場合、超過した額を追加で支払わなければなりません。
(※損失限定取引を除く)

取引期限があること

原則として、取引期限があります。

商品デリバティブ取引は、上場商品ごとに複数の決済期限が定められています。決済期限は月単位で定められていることから期限となる月を「限月(げんげつ)」といいます。なお、取引期限の定めのない商品も登場しています。

設定される限月の数は上場商品ごとに異なりますが、国内取引所に上場されている商品のうち取引期限のあるものの多くは、1つの商品につき6つの限月が設定されていて、1つの限月が納会により消滅すると、その直後に新しい限月の取引が始まり(発会といいます。)、複数の限月の取引が並行して行われます。この図で言えば、4月限が消滅すると、その後に10月限が発会します。

売りからでも買いからでも取引参加が可能

売りからでも買いからでも参加可能

現物株式は買いからしか参加できませんが、商品先物取引は契約時にモノとおカネの交換をする必要がないため、モノを持っていない人でも売りから参加することができます。

値段が下がると予想したら売りから参加

価格が下がると予想した場合には売りから参加して、予想通りに価格が下がればその時に買い戻すことで利益を得ることができます(図B)。この時予想に反して価格が上昇し、その時に買い戻すと損失が生じてしまいます(図A)。
逆に、価格が上がると予想した場合には買いから参加します。予想通りに価格が上がれば転売して利益を得ることができますが(図C)、予想に反して価格が下がったところで転売すると損失となります(図D)。